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ミュシャ展で新たに発見した大衆と芸術の混淆したニュー・スタイル

先日の土曜開館では8月末まで北九州市立美術館で催されていた「アルフォンス・ミュシャ展」を見学しました。 19 世紀末から流行したアール・ヌーヴォーは「新しい芸術」を意味していました。レトロさの中に、今現在の視点から見てもモダンさを見いだせるのがこの時代の芸術の特徴になります。今回も参加者から感想を頂きましたので紹介します。

アルフォンス・ミュシャ。
チェコを出身地とし、フランス等を中心に大きな活躍をしたグラフィックデザイナーにして、イラストレーターと画家を兼任したその人は、タイトルにもある通り、広告宣伝や食品パッケージのデザインといった大衆的表現が希求される分野において、類を見ない芸術性を導入したニュー・スタイルを確立し、相反する二者の概念を見事に結合した、ヨーロッパを代表する天才と言い表しても過言ではありません。

彼の作品が小倉という馴染み深い身近な地域に訪れたという朗報に心躍らせた土曜翌日。実際にミュシャの概念体系が凝縮された領域に足を踏み入れた瞬間、自分が身を置く世界の現実性が失われる程の、耽美的な色彩に飾られた世界に圧巻されました。華麗でなめらかな曲線を多用したデザインを基調とした緻密に精巧に輝くあらゆる概念と女神の如き神聖性を湛えて目に見えぬ玉座に座す女性の究極的な融合、装飾や宝飾や生活用品に調度品といった描写に映える豊富な物質性、筆舌に尽くしがたい絢爛豪華なアート性は、私の語彙のボキャブラリーなどでは到底言語化できないものでした。

無論、他にも本ブログに書き綴りたい感動は数えきれないほどにありますが、これからはミュシャを象徴する女性画の記述に、重点を置かせていただきます。これはあくまでも個人的推察ですが、彼の描く女性の最大の魅力として、女性性の美的感覚の鋭敏さというものが挙げられると思います。
女体は、過激な性的表現から清廉潔白な透明さ、庇護欲求の対象、優美さといった多岐に渡る魅力的要因を内包した概念を視覚化したものであり、世界各国において大なり小なり差異こそあれど、女性性と官能性は直接的関係に属しているものではないでしょうか。特に海外の女性は、肉感を強調したグラマラスな形状が多く、日本を始めとした東アジアとは相違する魅力を漂わせています。ですが、ミュシャの場合は、「二重の女性性」を描き切っていた風に感じました。上質なドレスを着こなす女性的な曲線に象られたエロティシズムな肉体に漂うのは、原色を連想する派手さと香水のような意志的な芳香。ですが、絵画の中に納まる彼女達を更に深く深く見つめていると、西洋的な優雅さの奥に、人為的な要素が皆無な天然由来の香木のような、東洋的な面映ゆい美意識が揺蕩う様を実感しました。

ヨーロッパ絶対王政時代の厳めしい「黄金」と、日本特有の自然調和を重視する「繊細」の、対極に位置する様式美の混淆を、「女性」という概念で体現したミュシャの卓越した技術力には舌を巻きました。相反する性質を帯びる要素を繋ぎ合わせる行為はとても難関で、綻びが生まれたり本来の形を歪めてしまうケースが多い中、ミュシャは商業面、芸術面、国際面、感性面といったビジネスと直感の要因を巧みに接続し、他の追随を許さない独自の形式を構築しました。今の漫画のコマ表現や女性と装飾の一体化など、私達の目を楽しませてくれる表現手段の父は、ミュシャであるという事実を学び、ミュシャの生み出した傑作の数々に触れ、これからも魅力を知っていきたいと思います。

(利用者 Hさん)